空を眺めて生きる


by ogisawakaoru
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Red Bull X-alps 2009 Day 4

クローンプラッセまでの徒歩での移動速度時速2km/hは、過去最低の平均速度を記録してしまったようだ。チームリーダーから嘆きの電話がかかってくる。今日も早朝のサーマルはあきらめなければならない。それでも、お昼過ぎにテイクオフに到着したころ先についていたのは、オランダのロニーだけで、みんな移動に苦労しているようだ。フィンランドのマコネン、ベルギーのトニーが集まったてきたところで私がテイクオフ。

テイクオフ北風、上空南西風、日射は南斜面の難しいコンディションでしたが、一緒に飛んでくれたマコネンをダミーに、私だけ2500mのクラウドベースをゲット。マコネンはたまらずトップランディング。他のパイロットは待ち体制に入ったようで、いっこうにテイクオフしてくる様子はない。前回はドロミテ山系に2度トップランディングし、夕方巨大なマルモラーダの岩盤から発生するアーベントテルミックで何とかセクターをクリアーしたことを思い出す。今回も条件は渋そうだが、待ってても駒を進めることはできないので先を急ぐ。

見切りよく、30kmほど先に見えるマルモラーダを直線的に狙い谷渡りを開始する。サーマルは渋くランディングを強いられるが、できるだけ次の行動が好条件で行えるように場所を厳選する。右の谷か、左の谷か迷うところを的確に判断し、メインロードにロスなく到達できるようにつり橋の近くにランディングする。とっさのときの判断ミスが大きな時間ロスにつながるので集中力の維持が大切である。南西風の強いこの日の私の狙いは、前回同様マルモラーダを左に見ながらジミーパーカーの所在するカナッゼに続く尾根に乗ることだった。もう一箇所西斜面でテイクオフできれば簡単に到達できる距離感である。次のテイクオフ予定地まで先を急いでいると、地元パイロットが小さな丘からテイクオフし岩盤をトップアウトしているのに遭遇する。しばらく観察しこのショートカットコースを狙い、登山を始めるとそこに松原がランディング態勢で入ってきた。せっかく2人になったので難しそうな小山は避け、当初の予定通り確実なテイクオフ地点へ一緒に移動することを決め、松原をガイドしながら15km程度ハイクする。街道を歩くと日射にやられてしまうので、小川沿いの木立の中を通過しながら目的のテイクオフ地点下部に体力を温存して到達。ロニーも私の動きをマークしているようで同じ町で落ち合い作戦を立てる。後発組みもこの日は、フライトでの距離を稼げていない。やはり、南西風が強くてどうにもならなかったように聞く。

夕方の、アーベントテルミックは発生しそうだが、予定の尾根までは風が強くて達成できそうもない。翌日どこからテイクオフするかで、いろいろな策が考えられる。ドロミテ山群は岩の形に特徴があり攻め方のバリエーションが豊富で面白い。しかし明日の予報では南風40ノットが吹く。マルモラーダを北から攻めるのはどの位置からでも難しそうだ。ロニー、松原を含めて悩むに悩むが、このときチームリーダーからもう少し歩いてビバークし、早朝マルモラーダに飛び込むようにテイクオフできるスキー場を見つけたから、暗いうちに登山ができればチャンスありとのアイデアをもらう。

ロニーもこのアイデアに乗り、夕暮れまでにもうひとつの峠越えをやってしまうことにし先を急ぐ。できれば飛んでやろうという気持ちがパイロットにある限り、モチベーションを保てるものである。歩行速度も普段どおりに戻ってきた。とにかく先を急ぐのみ。
by ogisawakaoru | 2009-08-11 17:19